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静かに、ドラマティックにシンプルな強さで満たす

光はそれ自体に重さはなく、形もない。しかし、デザイナーの吉岡徳仁氏は「空間を構成する一般的な素材と同じように、光を扱ってみたい」と考え、「HaaTAOYAMA(ハート・アオヤマ)」を設計した。ここでLED照明を用いたのは、「空間を包むときのLEDの光は、透明感がありながらも濃い印象だったからだ」という。「LEDには他の光源とは異なる気品があり、光の質もほかの照明器具では得がたいものがあります」とも語る。天井の一部に、直径50mmのLED照明を約700個組み込んだ。器具の配列を美しく見せること、そして光の効果を慎重に検討し、横4列に並べた器具のうち壁から離れた列では角度を微妙に変えている。こうした細かい調整が全体の光を大きく左右する。シンプルであればあるほど、細やかに、深く考える作業を重ねます」と吉岡氏。また、エントランス部分の壁面にはセンサーを設置し、出入りする人の動きを感知すると一部の光がわずかに変化するようにプログラミングした。人の動きに呼応しながら光の表情そのものを静かに、ドラマティックに変える。「LEDによって表現できる光は非常に未来的です。一方、『HaaTAOYAMA』が扱っている服は手仕事の繊細さを生かしたもの。空間を通して双方の特色を対比させながら示していくことを考えました」と振り返る。商品を見せるための一般的な照明がついている営業時間中は、LEDの光は控えめに存在する。ところが閉店後は一転し、店内が鮮やかな色の光で満たされ、ガラス越しにインテリアが浮かび上がる。2001年のオープン当初は、その光の色に赤を選んだ。同店のブランドカラーであり、「表情として美しい色だから」というのが理由だ。さらに、赤から緑へと緩やかにグラデーションを描く光も組み合わせた。その後、空間の光を緑に変えたときは、もう一色に紫を組み合わせた。吉岡氏が追求するのは、人の感覚に訴えるデザインだ。そのために、「まずは自分自身が心から楽しめるものをデザインしたいと思っている」という。デザインの楽しさを表現することができたなら、それは必ず多くの大に伝わると信じている。また、いつも何かひとつ新しいことに挑戦しようとも心がけている。その挑戦を通し、「従来のデザインの範ちゅうにとどまることのない可能性を探し求めていきたい」。その想いはこの店からも十分に感じ取ることができる。